2019年6月9日日曜日

普遍文法の全体像―句構造、変換構造、形態音素論

 前回は、東京大学の脳生理学者 酒井 邦嘉氏著「チョムスキーと言語脳科学」の序章と第一章を読んで私が理解した普遍文法(Universal Grammar)の木構造 (Tree Structure)を紹介しました。今回は、第二章「統辞構造論 (Syntactic Structures)」になります。

普遍文法の構成 
統辞構造論 (Syntactic Structures)において、普遍文法は、句構造、変換構造、形態音素論という3つの段階で構成されているようです。
 この3段階は、例えば「He eats pasta」(三人称単数+現在)を例にとると、図1のようになります。(前回記事の例文 "I ate pasta"を少しだけ変えた。)
 

図1:普遍文法―"He eats pasta"

私の理解では、普遍文法は、
① 句構造(≒木構造):文の静的な構造が決まる
② 変換構造:文脈(時制等)を加えた構造に変換

③ 形態音素論:語形を音素に変換
という段階で構成されます。「①句構造」(静的)だけでは、疑問文のような語の倒置が起こる文を説明できないため、「②変換構造」(動的)が普遍文法(理論)に加えられたようです。
 「②変換構造」では、まず「①句構造」の「He + eat + pasta」の述語「eat + pasta」の前にC(時制:現在)が追加され、次にCは"He"(三人称単数)の条件を含むS(三単現)に書き換えられます。そして「③形態音素論」で、「eat + S(三単現)」が、最終的に発話されれ"eats"に変換される。
 語の倒置が起こる疑問文 "Does he eat pasta?"は、図2のように生成されます。 
図2:普遍文法―"Does he eat pasta?"

 疑問文の「②変換構造」では、上とはことなる変換(疑問変換)が発生するようです。この段階では最初の文節 "He"と C(時制)の入れ替えが発生し、「③形態音素論」でC(時制)が"Does"に書き換えられる。
 このように、言語学的レベルでは、複数の段階をたどって人は文を理解するそうです。 

自然言語に存在する語順パターン 
 余談ですが酒井氏のインタビュー記事「文法が生み出す人間らしさ」(生命誌ジャーナル2010年春号)に、自然言語の語順パターンが紹介されていました。
 
 SOV「彼 本 読む」日本語・朝鮮語
 SVO「彼 読む 本」英語・中国語
 VSO「読む 彼 本」ウェールズ語・フィリピン語
 VOS「読む 本 彼」マダガスカル語
 OVS「本 読む 彼」カリブ語族のみ(350人)
 OSV「本 彼 読む」なし

おもしろいですね。人間の脳による思考メカニズムに関係していると思いますが、目的語が文の先頭にくる言語はほとんどないということですね。やはり、動作の主体(=主語)が先に来る言語がメジャーなようです。
 以上、普遍文法の構成(参考図書 第二章)と余談(インターネット記事)でした。普遍文法と一般人の英語学習の間にはギャップがあるように感じましたが、例えば機械学習のようなテクノロジーを使った自動翻訳の改善などには応用範囲がありそうです。次の第三章は、著者酒井氏の専門分野 脳科学による理論の実証ですが、英語学習に役立ちそうなコンセプトや情報があったら、ブログでも紹介していきたいと思います。
 それではまた! by a2c

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