今回は、これまでの話題(私の英語学習手法)からすこし外れますが、5月5日の記事で紹介した言語生得説のお話です。この説は東京大学の脳生理学者
酒井 邦嘉教授のインタビュー記事で知ったのですが、すごいタイミング、今年の4月10日に同氏の最新の著作「チョムスキーと言語脳科学」が発行されていましたので購入し、昨日から読み始めています。まだ、序章と第一章しか読んでませんが(その後に第二章、第三章、最終章がある)、得た知識の要約をシェアしたいと思います。
エイヴラム・ノーム・チョムスキー(Avram Noam Chomsky)
上記著作の主題「統辞構造論 (Syntactic Structures)」の提唱者(1928年生まれで存命中)。世界中の人文科学の論文(1980~1992)で引用された文献は、多い順にマルクス、レーニン、シェークスピア、アリストテレス、聖書、プラトン、フロイト、そして第八位がチョムスキー氏の著作だったようです。このことからも、同氏のものすごい影響力が分かります。
言語生得説
チョムスキー氏の理論のベースになる考え方で、言語機能は人間の脳の生得的な性質に由来するというもの。
普遍文法(Universal Grammar)
言語生得説では人間の脳にあらかじめ組み込まれていると考えられている、日本語・英語等の個別言語の根底にある共通した言葉の秩序。
木構造 (Tree Structure)
普遍文法の最も重要な部分であり、すべての個別言語に共通した文の基本構造。
例えば、昨日、私(このブログの筆者)は家族と夕食にパスタを食べたのですが、一番重要な「私はパスタを食べた」を抜き出すと、図1のような木構造で表すことができます。
図1:木構造ーパスタ(その1)
ここでのポイントは、日本語は主語・目的語・動詞(SOV)、英語は主語・動詞・目的語(SVO)と品詞の順序はことなるが木構造は変わらない、というところです。
どちらも一番高い位置で主語(私は/I)と述語(パスタを食べた/ate pasta)に枝分かれし、その下で述語は目的語(パスタを/pasta)と動詞(食べた/ate)に枝分かれする。
この文に修飾語「夕食に/for dinner」を加えると、木構造の階層が増え、図2のようになります。
図2:木構造ーパスタ(その2)
さらに修飾語「家族と/with my family」を加えると、また階層が増えて図3のようになります。
図3:木構造ーパスタ(その3)
このように木構造は言葉を積み上げていく性質ー階層性(hierarchy)―を持ち、また、文を長くしていっても幹に一番近い基本の形(主語と述語のペア)は揺るがない特徴を持つようです。これは、図で例を示した日本語、英語だけではなく、すべての言語に共通しているとのことです。
以上が、酒井氏著「チョムスキーと言語脳科学」の序章と第一章を読んで私が得た知識の要約です。
私の感想は、以下の3点です。
- 普遍文法、木構造を知って「英語も日本語と同じ木構造を持つ言語なんだから、日本語を話せる人は、必ず英語も話せるようになるよ!(ただし、努力はひつようだけど)」とエールを送られている気持ちになった。
- 木構造、階層性のほか、本の中では再帰性という用語も出てきて、プログラミングの勉強をしている錯覚に陥った。人間の脳の基本的な構造が、話す言葉のみならず、ソフトウェア等の作るものにも強く影響を与えているのだろうと感じた。
- この理論を知る過程は、英語というより、むしろ母国語である日本語を振り返る良い機会になりそう。
次の第二章が、いよいよこの本の主題の「統辞構造論 (Syntactic Structures)」ですが、英語学習に役立ちそうなコンセプトや情報があったら、ブログでも紹介していきたいと思います。
それではまた! by a2c
0 件のコメント:
コメントを投稿