2019年3月31日日曜日

分散学習アプリAnkiを使ったテストファーストな英語学習

前回記事で述べた基本戦略「テストファースト」を中心にした英語学習は、昨年(2018年)の5月からEvernoteを使って開始しました。当初は、テスト結果の記録、各問題の復習の計画を全て自分の手と頭でしていましたが、2019年に入って問題数が2,000を超えたあたりから作業コストが無視できなくなりました。そんなとき、Learn Better(アーリック・ボーザー著)という本を通して、分散学習というコンセプトとそれを実現するアプリ Ankiを知りました。今年の3月10日からは、EvernoteからAnkiに切り替えて、英語学習の新たなスタートを切っています。今回は、Ankiを使ったテストファーストな英語学習のさわりを紹介します。

分散学習とは? Ankiとは?

  • 分散学習とは?:英語名は”Spaced Repetition”(間隔をおいた反復)。人の記憶の忘却特性に基づいて、復習間隔を最初は短く、だんだん長くしていくことにより、記憶を効率的に定着させる学習方法。
  • Ankiとは?:分散学習のアルゴリズムを実装したフラッシュカード(暗記カード)のアプリケーション。Window版、iPhone版、Android版あり(ただし、Android版はAnkidroidという名前)。AnkiwebというWebサイトにアカウントを作成するとPC、iPhone、Androidの間でデータの同期ができる。米国の人気クイズ番組の2010年チャンピョン(史上最高得点で優勝)に使用された実績あり(Learn Betterで紹介)

Ankiを使ったテストファーストな英語学習
私は、PC(Anki)で問題セットを登録・編集し、スマートフォン(Android)に同期し、テストをしています。Ankiの仕様になりますが、学習は1日1回、学習1回の問題数は、新規が最大20問、復習は問題の登録数や各問題の記憶の定着度によって変動します。
以下では一つの問題を解く際の3つのステップと各ステップのポイントを紹介します。

(1)問題の表示
私のスマートフォン(Ankidroid)で表示した問題の例を図1に示します。

図1:スマートフォン(Ankidroid)での問題例

注記) 上記問題文(英文)は、Longman Longman Dictionary of Contemporary English Online
の例文を引用(和文は、本記事の筆者が和訳したもの)

見ての通り、英文の穴埋め問題で、和文の下線部分「に対して拒否権を持っている」に対応する部分が隠されています。ポイントは、動詞「を持っている」、名詞「拒否権」、前置詞「に対して」に対応する部分が英文で隠されているところです。このように基本戦略「コロケーションの習得」(前回記事ができるように問題を設計しています。

(2)解答
基本戦略「日本語でインプット、意味をリテイン、英語でアウトプット」(前回記事では解釈した意味を一旦保持する(リテインする)ことが重要と言いましたが、もう一つ補足します。解答した英文全体を細部も含めてリテインすることも重要です。これができないと、次のステップである答え合わせができません。

(3)答え合わせ
図1の画面最下部にある「解答を表示」を押すと、図2のように、問題の下に模範解答(正解)が表示されます。

図2:スマートフォン(Ankidroid)での問題例(模範解答表示)

注記) 画面したの表示内容―ボタンの数、各ボタン上部に表示されている期間(復習までの間隔)は、
   Ankiが評価する記憶の定着度によって異なる

ステップ(2)の解答が模範解答と一致していれば(正解であれば)、画面下部の「簡単」「普通」「難しい」のどれかを押し、一致していなければ(不正解であれば)「もう一度」ボタンを押します。
ここで重要なポイントは、以下の2つです。

(3-1)「もう一度」(不正解)は、振り返りの機会
誰しも不正解は嫌なので、名詞の前の"a/an"と"the"の違いなどの、細かな違いは見逃しがちです。ただここは、ぐっとこらえて細部にこだわり、自分の解答を厳しくチェックすることが、テストファーストの効果を上げると私は考えています。
例えば「(何かの)概要を説明する」"give an overview (of something)"ですが、”overview"の前は"an"に決まっているらしく"the"をつけるとネーティブスピーカーは違和感を覚えるようです。逆に「ギターを弾く」"play the guiter"では"guiter"の前は"the"に決まっています。このような法則の気づきは、細部にこだわることによって生まれます。このように「もう一度」(不正解)は、振り返りの機会になります。

(3-2)「簡単」「普通」「難しい」の基準
図2の画面最下部の各ボタンには「難しい」-「5日間」、「普通」-「10日間」、「簡単」-「13日間」というように、次に復習するまでの期間が表示されます。
4つのボタンのうちどれを押すかは、私は以下の基準で決めています。
  • 簡単 : 問題文を読み込んだ直後に、よどみなく解答できた
  • 普通 : 問題文を読み込んだあと、数秒の時間は空いたが解答できた 
  • 難しい :問題文を読み込んだあと、10秒以上は考え込んでしまった
このようにボタンを押す基準を決めることによって、Ankiによる各問題の復習計画の精度が上がり、記憶効率、学習効率も上がると考えています。

統計情報による視覚化
Ankiは、統計情報によって、学習状況を視覚化してくれます。

(1)カード(=問題)の種類
Ankiでは問題をカードと呼んでいますが、以下のグラフは、2019年3月30日時点で、私が登録したカードの種別です。登録したカードの合計は498枚、そのうち、記憶が定着しつつあるカード(「復習(熟知)」は18%(91枚)。カードの合計を適切な速度で増やしつつ、復習(熟知)のカードの比率を増やしていくことが当面の目標です。

(2)履歴(回答数、学習時間)
毎日の学習の回答数、時間の履歴が以下二つのグラフです。Ankiによる学習を始めてから20日がたちましたが、回答数は初日の20から80へと、学習時間は初日の10分から40分への右肩上がりに上がっています。私の生活スタイルから考えると平日の学習時間は1日40分が上限なので、休日に登録している新規カードの枚数を制限するなど、対策が必要になりつつあることがわかります。



Ankiを20日間使って
分散学習アプリAnkiの使用によって、従来よりも各段と学習効率が上がっているという実感は得られました。ただ、効果をどうやって定量的に、それも安価に把握するか、また右肩上がりに増加している学習時間を緩やかに抑えつつ学習効果を上げていく方法を考えていかなければならないと感じました。
 次回以降は、これらの課題も検討しながら、学習方法の実践的な内容にも触れていきたいと思います。

それでは、また!

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