2019年5月26日日曜日

全ての言語に共通する秩序ー普遍文法 (Universal Grammar)、木構造(Tree Structure)

今回は、これまでの話題(私の英語学習手法)からすこし外れますが、55日の記事で紹介した言語生得説のお話です。この説は東京大学の脳生理学者 酒井 邦嘉教授のインタビュー記事で知ったのですが、すごいタイミング、今年の410日に同氏の最新の著作「チョムスキーと言語脳科学」が発行されていましたので購入し、昨日から読み始めています。まだ、序章と第一章しか読んでませんが(その後に第二章、第三章、最終章がある)、得た知識の要約をシェアしたいと思います。

エイヴラム・ノーム・チョムスキー(Avram Noam Chomsky)

上記著作の主題「統辞構造論 (Syntactic Structures)」の提唱者(1928年生まれで存命中)。世界中の人文科学の論文(19801992)で引用された文献は、多い順にマルクス、レーニン、シェークスピア、アリストテレス、聖書、プラトン、フロイト、そして第八位がチョムスキー氏の著作だったようです。このことからも、同氏のものすごい影響力が分かります。

言語生得説
 
チョムスキー氏の理論のベースになる考え方で、言語機能は人間の脳の生得的な性質に由来するというもの。


普遍文法(Universal Grammar)
 
言語生得説では人間の脳にあらかじめ組み込まれていると考えられている、日本語・英語等の個別言語の根底にある共通した言葉の秩序。

木構造 (Tree Structure) 
普遍文法の最も重要な部分であり、すべての個別言語に共通した文の基本構造。

例えば、昨日、私(このブログの筆者)は家族と夕食にパスタを食べたのですが、一番重要な「私はパスタを食べた」を抜き出すと、図1のような木構造で表すことができます。

図1:木構造ーパスタ(その1)

ここでのポイントは、日本語は主語・目的語・動詞(SOV)、英語は主語・動詞・目的語(SVO)と品詞の順序はことなるが木構造は変わらない、というところです。
どちらも一番高い位置で主語(私は/I)と述語(パスタを食べた/ate pasta)に枝分かれし、その下で述語は目的語(パスタを/pasta)と動詞(食べた/ate)に枝分かれする。
この文に修飾語「夕食に/for dinner」を加えると、木構造の階層が増え、図2のようになります。



図2:木構造ーパスタ(その2)

 さらに修飾語「家族と/with my family」を加えると、また階層が増えて図3のようになります。

図3:木構造ーパスタ(その3)

このように木構造は言葉を積み上げていく性質ー階層性(hierarchy)―を持ち、また、文を長くしていっても幹に一番近い基本の形(主語と述語のペア)は揺るがない特徴を持つようです。これは、図で例を示した日本語、英語だけではなく、すべての言語に共通しているとのことです。

以上が、酒井氏著「チョムスキーと言語脳科学」の序章と第一章を読んで私が得た知識の要約です。
私の感想は、以下の3点です。

  • 普遍文法、木構造を知って「英語も日本語と同じ木構造を持つ言語なんだから、日本語を話せる人は、必ず英語も話せるようになるよ!(ただし、努力はひつようだけど)」とエールを送られている気持ちになった。
  • 木構造、階層性のほか、本の中では再帰性という用語も出てきて、プログラミングの勉強をしている錯覚に陥った。人間の脳の基本的な構造が、話す言葉のみならず、ソフトウェア等の作るものにも強く影響を与えているのだろうと感じた。
  • この理論を知る過程は、英語というより、むしろ母国語である日本語を振り返る良い機会になりそう。

 次の第二章が、いよいよこの本の主題の「統辞構造論 (Syntactic Structures)」ですが、英語学習に役立ちそうなコンセプトや情報があったら、ブログでも紹介していきたいと思います。
それではまた! by a2c

2019年5月20日月曜日

発音・イントネーションの確認:Google Translate+α (Sound of Text)

 前回の投稿までは、私の学習方法であるテスト駆動英語学習(TDEL)の一通りの流れを、基本戦略(3/23記事)に始まり、分散学習アプリ Anki(3/31記事)、情報ソース(4/7記事4/14記事)、問題集(4/21記事4/28記事)、そして振り返り(5/5記事5/12記事)と紹介してきました。今回の記事では、Google Translateを利用した発音・イントネーションの確認を紹介します。

発音の確認の位置づけと課題
 5/5記事で紹介しましたが、人の脳内の言語に関する中枢には、文法、読解、単語、音韻の4種類があります。これまでの記事では、主に文法、読解、単語に関わる内容が多かったですが、今回の記事は音韻の中枢強化に関わります。
 私の学習の目的「思ったことを英語で話せるようになる」を果たすためには、当たり前ですが音は重要です。相手が発話した内容を正しく聞き取れて、それに対する返答を相手が認識できる品質で発音できなければ会話は成立しません。このためには、TDELの問題の作成・テストの実施・テストの振り返りの過程を通して、適切な頻度で単語の発音、センテンスのイントネーションを確認し、自分の音韻中枢にフィードバックする必要があります。
 発音・イントネーションのフィードバックの理想はテストのたびに信頼できる音源を確認することです。私が知る中で最も信頼できる音源は教科書添付の音声メディア(CD or ファイル)ですが、これには以下の課題があります。
  • 教科書添付の音声ファイルをMP3形式に変換し、問題文毎に分割し、Ankiに登録するのは手間がかかりすぎる。
  • 問題文によっては、音源が無い、または音源はあるがファイル形式で入手できないものがある。
 上記の課題を考慮すると、膨大なテストの問題文の発音・イントネーションの確認は、テキスト読み上げツールの利用が妥当だと考えています。

Google Translate
 テキストの読み上げツールは多々ありますが、私が知る中で最も手軽で強力なのはGoogle Translateです。
 その理由は、以下の3点です。

  • 無料で利用できる。
  • Android最新版の場合は、アプリをインストールしなくても利用できる。
  • Googleの膨大なデータの分析により、日々読み上げの精度が進歩しているはずだし、今後もそれが続く期待が持てる。

 私のスマートフォン(Android最新版)では、以下の手順でGoogle Translateによるテキスト読み上げを利用しています。

(1)事前準備:Googleテキスト読み上げの有効化
 TOPメニューに表示されている設定メニュー(歯車のアイコン)を選択して、その下のメニューをシステム⇒言語と入力⇒詳細設定⇒テキスト読み上げの設定⇒優先するエンジン、の順序でたどり、Googleテキスト読み上げエンジンを選択する。事前準備はこれだけです。(旧OSの場合は、Google Playからアプリの入手が必要)

(2)テキスト読み上げ:Google Translateの利用
 2つのステップで画面上のテキストの読み上げができます。
  • ステップ1:画面上で読み上げさせたい文をタップして選択すると「ウェブ検索、翻訳」メニューのリストが表示される(図1)。リストの「翻訳」を選択するとGoogle Translateウィンドウが開く(図2)。

図1:Google Translate利用ステップ1
読み上げ文の選択


  • ステップ2:Google Translateウィンドウ上部の英文の先頭にあるスピーカアイコンをタップすると、テキストが読み上げられる(図2)。


図2:Google Translate利用ステップ2
音声の読み上げ

 私は、Ankiのフラッシュカードで問題をといたあと、発音を確認したいときにこのGoogle Translateを使っています。無料で、翻訳の精度も読み上げの精度も日々進歩しており、今後もそれが見込める。これを利用しない手はありません。

Sound of Text
 Google Translateのテキスト読み上げの音声をMP3形式でダウンロードできるWEBサイトです。WEBサイトで紹介されていますが、元々は、サイトオーナー自身がAnkiのフラッシュカードに添付する音声を作成するために個人的に作ったようです。



図3:Sound of Text (MP3作成後)

 図のように、Textボックスにセンテンスを入力して"Submit"ボタンを押すと、その下に"Sounds"というエリアが表示されてMP3ファイルがダウンロード可能になります。
 結構使えるサイトですが、1000を超えるAnkiのフラッシュカードの音声作成・添付となると、一括して処理する仕組みが必要だと感じています。

 以上、Google Translateを利用した発音・イントネーションの確認+α (Sound of Text)の紹介でした。
 それではまた! by a2c

2019年5月12日日曜日

テスト駆動英語学習(TDEL)-テストと振り返り後編:本当に正しいかより、自分が納得したかを重視

 前回記事では、テスト駆動英語学習(TDEL)の振り返りの前編として、テストと振り返りの全体の流れ、特徴について述べました。今回は後編として、テストと振り返りの具体的な内容に入ります。

1. 自分が納得したか?(私の心構えの変遷)
 テストの振り返りの具体的な説明に入る前に、テストの振り返りに対する私の心構えの変遷を述べます。
(1)「本当に正しいか?」の時期
 このブログの主題の一つに「どうやったらあまりお金をかけずに英語を習得することができるだろうか」がありますが、実をいうと、私は2018年4月初めから2019年1月末まで10か月間、ある英会話スクールの個人授業に月4回のペースで通い、月2万円後半のお金をかけて学習していました。テストファーストな英語学習は2018年の5月からEvernoteを使って開始していたので、テストで出た問いに対する答えは、ネーティブスピーカーの先生に確認していました。これには良い面と悪い面がありました。
 まず、良い面です。私にはなかった感覚を教えてもらえました。例えば、3月31日の記事でも述べた「(何かの)概要を説明する」"give an overview (of something)"という表現。自分のアイディアの概要を説明する際、"talk about"の後には"the overview  (of something)"が続くことは知っていたので、"give"の後にも当然 "the overview"がくると思っていました。しかし、先生に確認すると"an"の方が適切らしく、"the"をつけると違和感(聞き手が解釈する余地を与えない高圧的な感じ)を覚えるらしいのです。このように私にはなかった感覚を学ぶことができました。
 次に、悪い面です。これは私の振り返りに対する心構えの問題でした。日々のテストで出た問いに対して「本当に正しいか」に固執するあまり、なんでもかんでも週一回しか会わないネーティブの先生に確認を取っていました。その結果、日々発生する問いのリストはどんどん溜まっていきました。いま思うと、問いに対する答えはタイムリーに出して、テストにフィードバックするのが重要であったにも関わらずです。

(2)「本当に正しいか?」から「自分が納得したか?」へ
 英語会話スクールは子供の教育費優先のため2019年1月末にやめましたが、いま思えば学習に対する自分の主体性を持つという面では、良い区切りでした。2019年2月以降は、インターネット上の辞書(オンライン)やブログ記事を検索して調べることで解消しています。これは、前回記事でご紹介した現在のスタイルです。切り替えた当初は、インターネットの情報だけでは本当に正しいかどうかは分からず、少し手こずりました。今も「本当に正ししいか?」という点で状況は変わっていませんが、振り返りに対する考え方を変えることでこのプロセスの速度を改善しています。
 「本当に正しいか?」から「自分が納得したか?」への考え方の変更です。私は日本語のネーティブスピーカーですが、言葉の読みをずっと間違えていたり、正確な意味を知らずに使ってしまうことがあります。このことで、すごく恥ずかしい思いをした経験は何度かありますが、まずまずのレベルで日本語を話せます。理想を言えば、すべての言葉の読みと意味を正しく話したいものですが、思い返してみるとそれにもまして重要なことがあります。「自分ならこう言う」が確立されているかどうかです。
 この気づきによって、今の振り返りでは、ある英語表現の選択肢に対して、自分ならこう言うと納得したかを重視しています。テストで出た問いを納得するまで調べれば、悪くとも8割~9割は正しい、8割~9割正しければ英語での会話は十分に成立する、という考え方です。

2. 振り返りの具体例
 以下では、初めに問題・解答・振り返りのフォーマットを示した後、ピックアップした10の振り返り例を紹介します。(振り返りの具体例ということで、ネーティブの先生に確認したケースも掲載)

(0)問題・解答・振り返りのフォーマット
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[Front]         ※ Ankiの問題フィールド
 <ID>         ※ 問題集より
 <問題文(日本語)>    ※ 問題集より
[Back]         ※ Ankiの解答フィールド
 <問題文(英語>      ※ 問題集より
 <ノート>              ※ 問題集より(振り返りの結果-本稿の主役)
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4月28日の記事で問題集管理テーブル、Ankiカードのフォーマットを紹介しました。
・上記のフォーマットは、Ankiカードの2つのフィールドに、問題集管理テーブルの4つのフィールドの内容を記述したものです。
・この中の主役は、[Back]フィールドに記述した<ノート>フィールドの内容です。
・それでは、このフォーマットに従って、10の振り返り例を紹介します。

(1)写真描写の表現:関係代名詞"who"を削っても同じ意味
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[Front]
 0010
 左から2番目に座っている女の子
[Back]
 the girl who is sitting second from the left
 (ALSO the girl sitting second from the left)
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「左から2番目に座っている女の子」(名詞句)という写真描写に使う表現の問題です。
・振り返り1行目 "(ALSO ...)":解答"the girl who is sitting second from the left"は、関係代名詞の部分"who is"を削っても同じ意味

(2)写真描写の表現:前置詞を削ると違和感が出る
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[Front]
 0024
 何人かの人が大型ボートから降りているところだ.
[Back]
 Some people are exiting from a vessel.
 (ALSO are getting off a vessel)
 (△ are exiting a vessel)

 exit from sth: 船、電車のような大きな乗り物から降りる(from追加)
 ⇒ ""exit sth"" (from削除)でも文法上は正解だが違和感あり
 (ネーティブの先生に確認)
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・これも写真描写表現(大型ボートから何人かの人が降りているところ)
・振り返り1行目"(ALSO ...)":"get off"((電車や船から)降りる)を使った表現を追加。
・振り返り2行目"(△ ...)":意味は通じるけど正解ではないという意味で"△"を付けています。動詞が"exit"なので前置詞"from"は無くても良いと良い思いましたが、"from"を削ると違和感がでるようです。(英会話学校で先生に聞いたもの)

(3)ダイエット"diet"のコロケーション(句動詞)
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[Front]
 0201
 私は, 本当にダイエットをする必要がある.
[Back]
 I really must go on a diet.
 (ALSO really have to)
 (✖ get on a diet)

 get on: "diet"を始める意味にはならない(Longmanコロケーションに無い)
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・自分のダイエットの必要性を訴えた問題です。
・振り返り1行目"(ALSO ...)":"必要がある"の別表現"have to"を追加。("must"と"have to"は必要性の強さに違いがありますが、どちらも「必要がある」なので良しとしている)
・振り返り2行目"(✖ ...)":"go on"「(ダイエット)をする」は、"get on"でも言い換えられると思いましたが、オンライン辞書 LONGMANを調べたところ"diet"のコロケーションに"get on"は登録されていなかった。⇒ "get on a diet"は間違え(✖)と判断。

(4)Steve Jobs' Speechより:"truly" こころからそう思うとき
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[Front]
 0344
 それら(心と直観)は, どういうわけか既に あなたが本当になりたいことを知っているのです.
[Back]
 They somehow already know what you truly want to become. 
 (△ really want to become)

 truly: stronger than 'really'. 
 If you want to do something from the heart, 'truly' is better than 'really'.
 (ネーティブの先生に確認)
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・Steve Jobs' Speech (4月14日の記事で問題集の情報ソースとして紹介) の3つめのストーリ "death"の一文。
・"what"節の中の"you truly want to become"の副詞は"really"に置き換えられると思いました。しかし、英会話の先生に聞いたところ、”truly"は"really"よりも強い意味で、心から思うときは、これの方が良いと教えてもらいました。なので、"really"は△(意味は通じるけど使うべきではない)と判断。

(5)会議でPJ等の概要説明する表現:名詞の前の"an / the"
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[Front]
 0410
 最初の30分は, 開発案件の全体像について話したいと思います.
[Back]
 We'd like to talk about the overall picture of development projects in the first 30 minutes.
 (ALSO give an overview/overall picture of)
 (△ give the overview/overall picture of) 
 (△ talk about an overall picture of)

 give an overall picture: "an"が適切. "the"を付けると高圧的に聞こえる.
 talk about an overall picture: "an"を付けると不自然 (overall pictureは話し手にとって一つしかない)
 (ネーティブの先生に確認)
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・会議で開発案件の概要説明をするときの表現。
・振り返り1行目"(ALSO ...)": "talk about the overall picture of"の別表現として"give an overview/overall picture of"は通じる。
・振り返り2行目"(△ give the ...)":"give the overview/overall picture"というと不自然。"the"を付けると高圧的に聞こえる(読み手の解釈を、話し手が決めつけるイメージ)
・振り返り3行目"(△ talk about an ...)":話し手にとって、"overall picture"は一つしかないので、"an"だと変に感じる

(6)会議中止の理由:as/since vs becauseの意味の違い
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[Front]
 0475
 みな忙しいので会議を中止します.
[Back]
 Since everyone’s busy, we’ll cancel the meeting.
 (ALSO As everyone's busy,)
 (△ Because everyone's busy,)

 "everyon's busy"は、聞き手"everyone"には周知の事実なので、
 "Since/As"が適切(""because""は△)

 【as/since, becauseの違い】
 ■ as/since: 聞き手も知っていることを理由として言うときに使う
 ・asの方がフォーマル、sinceも若干フォーマル。
 ・カジュアルな会話では、soを使う。
 ■ because: 聞き手が知らないことを理由として言うときに使う
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・会議の中止を伝えるときの表現
・振り返り1行目 "(ALSO As ...)":"as"は"since"と交換可能
・振り返り2行目 "(△ Because ...)":"because"は聞き手が知らないことを理由にするときに使う。このケースでは、関係者が忙しいのは周知の事実と考え、"because"は△とした。

(7)ホテルのチェックアウト("of"が抜けると「確認する」に)
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[Front]
 0517
 私たちは11時までにホテルをチェックアウトすることになっている.
[Back]
 We’re supposed to check out of the hotel by 11:00.
 (ALSO check out from the hotel)
 (✖ check out the hotel)

 "check out of/from"の前置詞"of/from"は必要(削除不可).
 (理由) ""of/from""を削除すると, 「確認する」という意味になる.
 (ネーティブの先生に確認)
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・ホテルをチェックアウト時刻を示す表現。
・振り返り1行目"(ALSO .. )":"check out"につながる前置詞として"from"あり
・振り返り2行目"(✖ ...)":"check out"の後の前置詞を削除すると「確認する」という意味に変わってしまう

(8)入場料の注意書き (成句-省略が普通に)
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[Front]
 0523
 入場料は、特にことわりがない限りは無料です.
[Back]
 Admission is free unless otherwise noted.
 (ALSO unless it is otherwise noted)
 (ALSO unless noted otherwise)

 unless otherwise noted: "it is"が省略されている"a set phrase"(成句)
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・入場料の注意書きの表現
・振り返り1行目"(ALSO unless it is ..)":"it is"が省略される前の表現
・振り返り2行目"(ALSO unless noted)":修飾語"noted"は"otherwize"の後に付いても同じ意味。

(9)上訴-日本語も学ぶ
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[Front]
 0851
 裁判を欠席したため,彼は上訴する権利をはく奪された.
[Back]
 By being absent from the trial, he forfeited his right to appeal.

 上訴(じょうそ):裁判の判決に対して、上級の裁判所に不服を申し立てること。
 1→2審の上訴を「控訴」、2→3審の上訴を「上告」という。
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・裁判に関する表現。
・「控訴」「上告」は知っていたが、それらの意味を包含する「上訴」は知らなかった(お恥ずかしい限り)。
・英語では、「控訴」「上告」も"appeal"なので、必然的に「上訴」を学ぶ。

(10)遅刻を謝る(教科書に書いていたが、本当はそういわない)
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[Front]
 2394
 遅れてすみません。
[Back]
 Sorry I'm late.  I am sorry to be late.
 Sorry I'm late.
 (ALSO I'm sorry I'm late.)

 原文"I am sorry to be late."は、遅れることが確定していないのに謝っている。
 ネット上でネーティブスピーカーには違和感ありとの声。
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・遅刻を謝る表現。
・教科書に載っていた"I am sorry to be late."は、どうしても"I'm sorry I'm late."といってしまうので、インターネットを調べると自分の表現のほうが適切と判明。
・言いやすい・覚えやすい表現は、ネーティブスピーカーも使っている。

 以上、テストの振り返り10例を紹介しました。前置詞、冠詞がその文の意味に与える影響だったり、日本語だったり、実は自分が言いやすい表現の方が良かったりと振り返りを通して学ぶことはいろいろあります。このようなテストの振り返りを通して、前回記事でも述べた通り、自分の脳内にある言語の規則を少しずつ修正していけると考えています。
 今回10回目の投稿になりますが、私の学習方法であるテスト駆動英語学習(TDEL)について、一通り説明したつもりでいます。アメリカのテレビドラマでいうと、シーズン1が終わったというところです。次回以降のシーズン2では、運用上のTIPSから始めていき、まだ取り上げていない音の課題等にも触れていきたいと思います。

それではまた! by a2c

2019年5月5日日曜日

テスト駆動英語学習(TDEL)-テストと振り返り前編:忘れかけた自分が新たな問いを立てる

 令和が幕を開けました。少しワクワクしています。日本国としても、私個人としても、何かが変わっていく、または何かを変えていく期待感が自分の中にあるのだと思います。初回記事で述べた「私も含めて、日本の人々が草の根レベルで世界の人々と触発されながら、学び、遊び、そして働くことができたらな、また、それを実現するために少しでも役に立てたらな」という思いを胸に、まずはこのブログで、私が提唱するテスト駆動英語学習(TDEL)や、そのほか言語の学びに関する情報発信をしていきたいと思います。
 前々回の記事前回記事の2回に渡ってTDELの問題集の外観、作り方を紹介しました。そして、いよいよTDELの中心部分であるテストと振り返りに入ります。今回はテストと振り返りの概要、次回は具体的に、という形で2回に分けて紹介します。

1.本題に入る前に
(1)脳科学が明かす言語習得のメカニズム
     (Diamond Harvard Business Review, October 2012 より)

 東京大学の脳生理学者 酒井 邦嘉(さかい くによし)教授にインタビューした記事ですが、大変参考になった(特に言語中枢の分類は本稿の図に入れさせていただいた)ので、以下の通り、二つの考え方を要約します。

  • 外国語の習得プロセス:母語(L1)も外国語(L2)も、使われている脳の場所はまったく同じ(脳内には、文法・単語・音韻・読解の4つの言語中枢がある)。L2を習得するプロセスは、L1の規則を修正しながら、無数の規則を少しずつ入れていく作業。時にはL1の規則の一部を捨て去る柔軟な対応が必要になる。L2習得における困難の多くはL1の規則に引きずられることによるものだが、実はL1の基盤が豊かな方がL2の習得において柔軟な対応が可能になる。
  • 言語生得説:人は生まれたときから言語知識の体系を持っているという説(酒井氏はこの説の裏付けを試みている)。赤ちゃんが限られた刺激と未発達の推論能力だけで数年のうちにほぼ完全にL1を習得できる事実を、後天説だけでは説明できない。人の思考は脳にもともと備わっている普遍文法をベースに獲得されたL1に導かれる。L2はL1をベースに習得される。

 上の考え方は、日本語には自信があるけど英語は発展途上の人(私も含む)に朗報です。もう既にあなたには(もちろん私にも)、英語を話すための言語的な基盤が備わっています! あとは、L2(=英語)の規則を受け入れ、L1(=日本語)の規則に加えていくだけです。今後はこのような言語習得理論も学び、私の学習手法の規則にも修正を加えていきたいと思います。

(2)テストと振り返りのおさらい(これまでの記事で述べたこと)
 今回の主題は「テストと振り返り」ですが、これまでの記事で述べたこと(短縮版)は以下の通りです。

  • 英語学習の基本戦略(3/23記事)
    テストファースト:
    定期的にテストするのではなく、テスト自体が学習ととらえる。不正解は振り返りの機会となる。
    日本語でインプット、意味をリテイン、英語でアウトプット: テストでは、インプット(日本語)の意味を頭の中でリテインし、一気に英語で話す(アウトプット)。
    コロケーションの習得:テストの問題は、一緒に使われる語と語の組み合わせ(コロケーション)をセットで習得できるよう作成する。
    分散学習アプリの活用:テストには分散学習アプリAnkiを活用し、記憶の忘却特性に基づいて問題ごとに復習間隔を調整する。
  • 不正解は、振り返りの機会 (3/31記事)テストの答え合わせでは、名詞の前の"a/an"と"the"の違いなどの細部にこだわり、自分の解答を厳しくチェックすることが、テストファーストの効果を上げる。
  • 連想ネットワークの強化 ≠ 暗記 (4/28記事)
    コロケーションを含むテストの反復によって、脳内の連想ネットワークを強化し、クティブボキャブラリの増強をめざす。
以上おさらいでしたが、言語習得のメカニズム(上記(1))の視点で、「テストと振り返り」を捉えなおすと、まさに「脳内の言語の規則を修正するプロセス」である、と言えます。

2.TDELにおけるテストと振り返り
(1)全体の流れ
 上記でもおさらいしましたが、TDELの4つの基本戦略は全てテストと振り返りにかかわるものです。よって、このプロセスがTDELの心臓部といえます。
 以下の図は、4/21記事で取り上げた最短の問題文 「静かにしなさい」/"Be quiet."を例に、TDELのテストと振り返りの全体の流れを表しています。実をいうと私は問題文「静かにしなさい」に対して"Be quet"以外を解答したことはありませんが、ここでは、説明のためにあえて誤答(正答と不一致)のケースにしています。


図1:テスト駆動英語学習(TDEL)のテストと振り返りの流れ("Be quiet"の例)

このプロセスは、図からもわかる通りテスト、振り返りの2フェーズから成り、テストフェーズは3ステップ(➀~③)、振り返りフェーズは2ステップ(④~➄)から成ります。
 以下では、各ステップを説明します。

テストフェーズ:
① 日本語の問題文の読解と英語での解答:
 Ankiカードの問題文「静かにしなさい。」を読み、解答"Keep quiet."を発話する。脳内では読解中枢が問題文の意味を解釈し、単語中枢文法中枢が英文を構成し、音韻中枢が発話のための発音・アクセントを加える。
② 解答の正誤チェック:
 解答"Keep quiet."がAnkiカードの正答"Be quiet."と一致しているかチェックする。このケースでは、不一致のため、誤答となる。
③ チェック結果の認識と誤答の記録:解答が誤答であることを認識する。この認識の結果は、即時に脳内にフィードバックされる。ただし、<実は正答では?>という問いが生じる。問いが生じた誤答"Keep quiet."をメモし(図示なし)、次の振り返りフェーズに引き継ぐ

振り返りフェーズ:
④ 誤答の調査(新たな正答、補足ルールの抽出):
 テストフェーズでメモした誤答"Keep quiet."「静かにしなさい」を意味するかをインターネット上の辞書(オンライン)ブログ記事を検索して調べる(教科書等のオフライン情報でも全く問題ないが、調査効率を考えると、検索可能なオンライン情報が断然便利)。図の調査例では、"Keep quiet."<やはり正答だった!>ことがわかったほか、<ほかの言い方> "Keep it down."<丁寧な言い方> "Could you ... ?"がわかった。
⑤ 調査結果のフィードバック:
 上記の調査により確認できた新たな正答と補足情報を問題集に登録し、その内容をAnkiカードに反映する。このステップにより、正答のバリエーションが増え、上記1.(1)でいうところの言語の規則のカバー範囲が広がります。
 以上「テストと振り返り」の全体の流れを説明しましたが、次に私が考えるこのプロセスの最大の特徴を説明します。

(2)最大の特徴「忘れかけた自分が新たな問いを立てる」
 このプロセスの目的は、(1)のステップ➄で行う各問題の正答のバリエーションを増やし、問題集がカバーする言語規則の範囲を広げることです。
 ただ、最大の特徴は、ステップ③で説明した<(誤答は)実は正答では?>という問いが生じるところです。一言でいうと「忘れかけた自分が新たな問いを立てる」といったところでしょうか。
 自分の記憶の制約が新たな学びの契機になる。1000問単位のオーダーがある英語の問題文すべての単語と順序を丸暗記することは普通の人間にには(少なくとも私には)不可能です。テスト直後、問題文は丸暗記に近い形で単語の順序も含めて記憶されていますが、ある期間が過ぎると、その情報は消失し、図1①の脳内の単語(の意味)文法(の規則)だけが残ると考えられます(もちろん、読解・音韻の情報も記憶される)。分散学習アプリAnkiは記憶の忘却特性に基づいて各問題の復習間隔を調整するので、次の出題時には、前回のテスト直後にあった丸暗記に近い記憶はすでに消失しています。脳内では、Ankiカードの問題文を解釈し、英語の単語(の意味)文法(の規則)を手掛かりに英文を再構成するので、一定の割合で正答と異なる解答をします。その割合は、問題集の難易度、正答のバリエーション、学習進度により異なります。私の場合は、これまでの2月弱で5000回以上の問題に解答しましたが、そのうちの約15%(約750回)が正答と異なり、そのうちの約20%(約150回)があとで調べると文法的に正しい解答(=新しい正答)でした。
 今後、このペースが続くかはわかりませんが、自分の記憶の制約が契機となり、2か月間で約150の新しい言語の規則が自分の学習システムに追加されたわけですから、少し面白みを感じています。感覚としては、記憶の状態が異なる様々な自分が居て、各人がいろいろなきっかけを作り、自分向けの教材を作っているというものです。面白くありませんか?


以上、TDELのテストと振り返りの全体の流れ、特徴について述べましたが、次回の「テストと振り返り後編」では、テストと振り返りの具体的な内容について紹介したいと思います。
それでは、また! by a2c

今日の流行言葉ーゴリゴリの(die-hard)

あけましておめでとうございます。 令和2年の幕開けは、若者の流行言葉「ゴリゴリの」です。 例文: 私の兄は、ゴリゴリの映画ファンです。 My brother is a die-hard movie fan. 今回の「ゴリゴリの」は、ティーンエイジャーの息子と娘の会話...