前回記事では、テスト駆動英語学習(TDEL)の振り返りの前編として、テストと振り返りの全体の流れ、特徴について述べました。今回は後編として、テストと振り返りの具体的な内容に入ります。
1. 自分が納得したか?(私の心構えの変遷)
テストの振り返りの具体的な説明に入る前に、テストの振り返りに対する私の心構えの変遷を述べます。
(1)「本当に正しいか?」の時期
このブログの主題の一つに「どうやったらあまりお金をかけずに英語を習得することができるだろうか」がありますが、実をいうと、私は2018年4月初めから2019年1月末まで10か月間、ある英会話スクールの個人授業に月4回のペースで通い、月2万円後半のお金をかけて学習していました。テストファーストな英語学習は2018年の5月からEvernoteを使って開始していたので、テストで出た問いに対する答えは、ネーティブスピーカーの先生に確認していました。これには良い面と悪い面がありました。
まず、良い面です。私にはなかった感覚を教えてもらえました。例えば、
3月31日の記事でも述べた「(何かの)概要を説明する」"give an overview (of something)"という表現。自分のアイディアの概要を説明する際、"talk about"の後には"the overview (of something)"が続くことは知っていたので、"give"の後にも当然 "the overview"がくると思っていました。しかし、先生に確認すると"an"の方が適切らしく、"the"をつけると違和感(聞き手が解釈する余地を与えない高圧的な感じ)を覚えるらしいのです。このように私にはなかった感覚を学ぶことができました。
次に、悪い面です。これは私の振り返りに対する心構えの問題でした。日々のテストで出た問いに対して「本当に正しいか」に固執するあまり、なんでもかんでも週一回しか会わないネーティブの先生に確認を取っていました。その結果、日々発生する問いのリストはどんどん溜まっていきました。いま思うと、問いに対する答えはタイムリーに出して、テストにフィードバックするのが重要であったにも関わらずです。
(2)「本当に正しいか?」から「自分が納得したか?」へ
英語会話スクールは子供の教育費優先のため2019年1月末にやめましたが、いま思えば学習に対する自分の主体性を持つという面では、良い区切りでした。2019年2月以降は、インターネット上の辞書(オンライン)やブログ記事を検索して調べることで解消しています。これは、
前回記事でご紹介した現在のスタイルです。切り替えた当初は、インターネットの情報だけでは本当に正しいかどうかは分からず、少し手こずりました。今も「本当に正ししいか?」という点で状況は変わっていませんが、振り返りに対する考え方を変えることでこのプロセスの速度を改善しています。
「本当に正しいか?」から「自分が納得したか?」への考え方の変更です。私は日本語のネーティブスピーカーですが、言葉の読みをずっと間違えていたり、正確な意味を知らずに使ってしまうことがあります。このことで、すごく恥ずかしい思いをした経験は何度かありますが、まずまずのレベルで日本語を話せます。理想を言えば、すべての言葉の読みと意味を正しく話したいものですが、思い返してみるとそれにもまして重要なことがあります。「自分ならこう言う」が確立されているかどうかです。
この気づきによって、今の振り返りでは、ある英語表現の選択肢に対して、自分ならこう言うと納得したかを重視しています。テストで出た問いを納得するまで調べれば、悪くとも8割~9割は正しい、8割~9割正しければ英語での会話は十分に成立する、という考え方です。
2. 振り返りの具体例
以下では、初めに問題・解答・振り返りのフォーマットを示した後、ピックアップした10の振り返り例を紹介します。(振り返りの具体例ということで、ネーティブの先生に確認したケースも掲載)
(0)問題・解答・振り返りのフォーマット
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[Front] ※ Ankiの問題フィールド
<ID> ※ 問題集より
<問題文(日本語)> ※ 問題集より
[Back] ※ Ankiの解答フィールド
<問題文(英語> ※ 問題集より
<ノート> ※ 問題集より(振り返りの結果-本稿の主役)
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・
4月28日の記事で問題集管理テーブル、Ankiカードのフォーマットを紹介しました。
・上記のフォーマットは、Ankiカードの2つのフィールドに、問題集管理テーブルの4つのフィールドの内容を記述したものです。
・この中の主役は、[Back]フィールドに記述した<ノート>フィールドの内容です。
・それでは、このフォーマットに従って、10の振り返り例を紹介します。
(1)写真描写の表現:関係代名詞"who"を削っても同じ意味
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[Front]
0010
左から2番目に座っている女の子
[Back]
the girl who is sitting second from the left
(ALSO the girl sitting second from the left)
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・「左から2番目に座っている女の子」(名詞句)という写真描写に使う表現の問題です。
・振り返り1行目 "(ALSO ...)":解答"the girl who is sitting second from the left"は、関係代名詞の部分"who is"を削っても同じ意味。
(2)写真描写の表現:前置詞を削ると違和感が出る
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[Front]
0024
何人かの人が大型ボートから降りているところだ.
[Back]
Some people are exiting from a vessel.
(ALSO are getting off a vessel)
(△ are exiting a vessel)
exit from sth: 船、電車のような大きな乗り物から降りる(from追加)
⇒ ""exit sth"" (from削除)でも文法上は正解だが違和感あり
(ネーティブの先生に確認)
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・これも写真描写表現(大型ボートから何人かの人が降りているところ)
・振り返り1行目"(ALSO ...)":"get off"((電車や船から)降りる)を使った表現を追加。
・振り返り2行目"(△ ...)":意味は通じるけど正解ではないという意味で"△"を付けています。動詞が"exit"なので前置詞"from"は無くても良いと良い思いましたが、"from"を削ると違和感がでるようです。(英会話学校で先生に聞いたもの)
(3)ダイエット"diet"のコロケーション(句動詞)
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[Front]
0201
私は, 本当にダイエットをする必要がある.
[Back]
I really must go on a diet.
(ALSO really have to)
(✖ get on a diet)
get on: "diet"を始める意味にはならない(Longmanコロケーションに無い)
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・自分のダイエットの必要性を訴えた問題です。
・振り返り1行目"
(ALSO ...)":"必要がある"の別表現"
have to"を追加。("must"と"have to"は必要性の強さに違いがありますが、どちらも「必要がある」なので良しとしている)
・振り返り2行目"
(✖ ...)":"
go on"「(ダイエット
)をする」は、"
get on"でも言い換えられると思いましたが、オンライン辞書 LONGMANを調べたところ"diet"のコロケーションに"
get on"は登録されていなかった。⇒
"get on a diet"は間違え(✖)と判断。
(4)Steve Jobs' Speechより:"truly" こころからそう思うとき
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[Front]
0344
それら(心と直観)は, どういうわけか既に あなたが本当になりたいことを知っているのです.
[Back]
They somehow already know what you truly want to become.
(△ really want to become)
truly: stronger than 'really'.
If you want to do something from the heart, 'truly' is better than 'really'.
(ネーティブの先生に確認)
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・Steve Jobs' Speech (
4月14日の記事で問題集の情報ソースとして紹介) の3つめのストーリ "death"の一文。
・"what"節の中の"
you truly want to become"の副詞は"
really"に置き換えられると思いました。しかし、英会話の先生に聞いたところ、”
truly"は"
really"よりも強い意味で、心から思うときは、これの方が良いと教えてもらいました。なので、
"really"は△(意味は通じるけど使うべきではない)と判断。
(5)会議でPJ等の概要説明する表現:名詞の前の"an / the"
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[Front]
0410
最初の30分は, 開発案件の全体像について話したいと思います.
[Back]
We'd like to talk about the overall picture of development projects in the first 30 minutes.
(ALSO give an overview/overall picture of)
(△ give the overview/overall picture of)
(△ talk about an overall picture of)
give an overall picture: "an"が適切. "the"を付けると高圧的に聞こえる.
talk about an overall picture: "an"を付けると不自然 (overall pictureは話し手にとって一つしかない)
(ネーティブの先生に確認)
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・会議で開発案件の概要説明をするときの表現。
・振り返り1行目"
(ALSO ...)": "
talk about the overall picture of"の別表現として"
give an overview/overall picture of"は通じる。
・振り返り2行目"
(△ give the ...)":"
give the overview/overall picture"というと不自然。
"the"を付けると高圧的に聞こえる(読み手の解釈を、話し手が決めつけるイメージ)
・振り返り3行目"
(△ talk about an ...)":話し手にとって、"
overall picture"は一つしかないので、
"an"だと変に感じる。
(6)会議中止の理由:as/since vs becauseの意味の違い
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[Front]
0475
みな忙しいので会議を中止します.
[Back]
Since everyone’s busy, we’ll cancel the meeting.
(ALSO As everyone's busy,)
(△ Because everyone's busy,)
"everyon's busy"は、聞き手"everyone"には周知の事実なので、
"Since/As"が適切(""because""は△)
【as/since, becauseの違い】
■ as/since: 聞き手も知っていることを理由として言うときに使う
・asの方がフォーマル、sinceも若干フォーマル。
・カジュアルな会話では、soを使う。
■ because: 聞き手が知らないことを理由として言うときに使う
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・会議の中止を伝えるときの表現
・振り返り1行目 "
(ALSO As ...)":"
as"は"
since"と交換可能
・振り返り2行目 "
(△ Because ...)":
"because"は聞き手が知らないことを理由にするときに使う。このケースでは、
関係者が忙しいのは周知の事実と考え、"because"は△とした。
(7)ホテルのチェックアウト("of"が抜けると「確認する」に)
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[Front]
0517
私たちは11時までにホテルをチェックアウトすることになっている.
[Back]
We’re supposed to check out of the hotel by 11:00.
(ALSO check out from the hotel)
(✖ check out the hotel)
"check out of/from"の前置詞"of/from"は必要(削除不可).
(理由) ""of/from""を削除すると, 「確認する」という意味になる.
(ネーティブの先生に確認)
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・ホテルをチェックアウト時刻を示す表現。
・振り返り1行目"
(ALSO .. )":"
check out"につながる前置詞として"
from"あり
・振り返り2行目"
(✖ ...)":"
check out"の後の前置詞を削除すると
「確認する」という意味に変わってしまう。
(8)入場料の注意書き (成句-省略が普通に)
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[Front]
0523
入場料は、特にことわりがない限りは無料です.
[Back]
Admission is free unless otherwise noted.
(ALSO unless it is otherwise noted)
(ALSO unless noted otherwise)
unless otherwise noted: "it is"が省略されている"a set phrase"(成句)
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・入場料の注意書きの表現
・振り返り1行目"
(ALSO unless it is ..)":
"it is"が省略される前の表現
・振り返り2行目"
(ALSO unless noted)":修飾語"
noted"は"
otherwize"の後に付いても同じ意味。
(9)上訴-日本語も学ぶ
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[Front]
0851
裁判を欠席したため,彼は上訴する権利をはく奪された.
[Back]
By being absent from the trial, he forfeited his right to appeal.
上訴(じょうそ):裁判の判決に対して、上級の裁判所に不服を申し立てること。
1→2審の上訴を「控訴」、2→3審の上訴を「上告」という。
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・裁判に関する表現。
・「控訴」「上告」は知っていたが、それらの意味を包含する「上訴」は知らなかった(お恥ずかしい限り)。
・英語では、「控訴」「上告」も"appeal"なので、必然的に「上訴」を学ぶ。
(10)遅刻を謝る(教科書に書いていたが、本当はそういわない)
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[Front]
2394
遅れてすみません。
[Back]
Sorry I'm late. I am sorry to be late.
Sorry I'm late.
(ALSO I'm sorry I'm late.)
原文"I am sorry to be late."は、遅れることが確定していないのに謝っている。
ネット上でネーティブスピーカーには違和感ありとの声。
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・遅刻を謝る表現。
・教科書に載っていた"
I am sorry to be late."は、どうしても"
I'm sorry I'm late."といってしまうので、インターネットを調べると自分の表現のほうが適切と判明。
・言いやすい・覚えやすい表現は、ネーティブスピーカーも使っている。
以上、テストの振り返り10例を紹介しました。前置詞、冠詞がその文の意味に与える影響だったり、日本語だったり、実は自分が言いやすい表現の方が良かったりと振り返りを通して学ぶことはいろいろあります。このようなテストの振り返りを通して、
前回記事でも述べた通り、自分の脳内にある言語の規則を少しずつ修正していけると考えています。
今回10回目の投稿になりますが、私の学習方法であるテスト駆動英語学習(TDEL)について、一通り説明したつもりでいます。アメリカのテレビドラマでいうと、シーズン1が終わったというところです。次回以降のシーズン2では、運用上のTIPSから始めていき、まだ取り上げていない音の課題等にも触れていきたいと思います。
それではまた! by a2c